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元連合国捕虜虐待問題:謝罪と補償へ舵を切れ=福田昭典 ◇日本企業の世界戦略のためにも 五月十日の毎日新聞夕刊は、「全米バターン・コレヒドール防衛兵の会」元会長であるレスター・テニー氏が元連合国捕虜を使役した日本企業へ謝罪を求めた手記を掲載した。本稿では、テニー氏の手記を受けて、日本企業の謝罪がなぜ必要かを改めて述べたい。 筆者は一九九九年十二月、「戦争犯罪と戦後補償を考える国際市民フォーラム」の証言者として来日した氏とお会いする機会を得た。いつも満面に笑みを湛(たた)えていたが、証言はむごたらしく、「日本人は犬を棒で打ったり蹴(け)ったりはしないのに、捕虜に対しては平気で殴り蹴った」と語り、「大企業の三井が、かつて戦争捕虜に対して行ったことを何も知らせず、教えようとしていない」と告発した。 テニー氏は手記で、藤崎一郎駐米大使が昨年五月、元捕虜の人々に「途方もない損害と苦しみを与えたことを心から謝罪」したことを、名誉ある解決を図るものと評価しつつ、日本経団連の御手洗富士夫会長(当時)へ謝罪を求めた手紙が無視された、とも記している。 藤崎大使の誠実な対応と比べ、テニー氏の手紙に返答しない御手洗氏の対応は、日本経団連の歴史事実への不誠実さを際立たせる。テニー氏はさらに、三井、三菱、川崎、日本車両、日立などの企業で捕虜が奴隷労働を強いられた、とつづった。 注目すべきは、名指しされた各社が米国各地で計画中の巨大な社会インフラ整備である高速鉄道建設プロジェクトへの入札参加を表明し、日本政府と密接な連携をもって積極的な営業活動を展開する我が国の代表的な企業であることだ。 二日後の五月十二日、毎日新聞朝刊は、米国高速鉄道に絡む日本の企業と政府が一体となった売り込みを特集記事で報じた。「新幹線、リニア 米に売り込み」「官民一体で積極策」「内需限界 海外に活路」の見出しが躍っていた。 日本軍に捕らえられた米軍捕虜の四〇%が「外地」「内地」の捕虜収容所で死んだ歴史事実に、日本政府とかつての使役企業は真摯(しんし)に対応すべきである。政府が元捕虜のために追悼碑一つ建てず、強制労働を課した企業がその事実さえ認めない現実は、あまりに異常である。テニー氏の手記は、米国の公共工事へ参入するためには、日本の政府と企業が歴史認識を改め、戦後補償をなすべきである、という警告に聞こえる。 問題解決の手本はある。米国の高速鉄道網建設プロジェクトの強力なライバルであるドイツが、ナチス体制下で旧ソ連邦、ポーランドをはじめとする欧州各地から強制連行し、強制労働を課した被害者の補償のために、官民それぞれが五十億マルク、総計百億マルクを拠出し、二〇〇〇年八月に設立した強制労働補償基金「記憶・責任・未来」がそれである。現在までに約百七十万人への補償金の支払いを終えている。 他方日本では、二〇〇〇年十一月に東京高裁で鹿島建設花岡裁判の歴史的な和解が成立して以降、戦時中の強制連行・強制労働問題の解決は途絶えていた。しかし、昨年から今年にかけて西松建設が関(かか)わる二つの強制労働裁判(広島県安野発電所・新潟県十日町発電所)で企業の謝罪と補償(安野では記念碑建立を含む)を内容とする和解が成立した。画期的な事例を前に、政府も企業も大きく歴史の舵(かじ)を切るべき時である。 三井・三菱の鉱山現場で撮られた、元捕虜の骨と皮だけの〓(や)せこけた写真が残されている。この写真が米国のマスメディアに取り上げられた際の反響を想像できる経営者であれば、「歴史問題」の放置が自社の世界戦略にとっていかなるリスクであるかも理解できよう。 テニー氏の訴えに、日本経団連の米倉新体制と各企業経営陣が迅速に対応するよう求めたい。(ふくだ・あきのり=中国人強制連行を考える会事務局長) 毎日新聞 2010年7月26日 東京夕刊
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